伝説の講義

IT研修講師のブログです。

技術者育成の現場

このエントリーは『DevLOVE Advent Calendar 2013 「現場」』、44日目の勝又さんに引き続き45日目の記事です。
本来のアドベントカレンダーは、12/1に開始して12/24が最終日だそうで、そういう節目の日に担当できるのがちょっと嬉しかったりします。
(ええ…いくら世の中が浮かれていようが、現場はそこにあり続けるんですよ)

 

自己紹介

yokatsuki(よかつき)です。外資系ベンダーで自社製品の技術トレーナーをかれこれ10年近く担当しています。その他の業務経験としては、福岡の支社でプリセールスエンジニアを4年程やっていたり、更に昔には社内システムの開発運用をやっていたりしていました。

 

自分にとっての現場

トレーナーにとっての現場とは、講習を実施する教室と考えるのが一般的だと思います。確かに教室で過ごす時間は1日あたり7時間で、それが3~5日続くのですから。
しかし、教室が現場である、というイメージに囚われ過ぎると、教室で起きること以外に関心が向かなくなってしまい、「いかに講義時間を美しく演出するか」と考えてしまいます。こうなると、受講者に必要な知識や技術を提供するという本来の目的から逸れてしまっているのは明らかです。
受講者は、受講者それぞれに開発なり運用の現場を持ち、そこで役に立つ知識や技術を学びに来ている訳ですから、トレーナーはその「受講者それぞれの現場」を意識して講習を進めるべきだと思っています。

 

変わる技術者育成の現場

技術者育成の現場は、基本的に開発や運用の現場とイコールであることは今も昔も変わりありません。
現場経験から学ぶのは実践的で良いことではあるのですが、開発や運用の現場から学ぶスタイルだけだと、外部からの知恵が流入しないので、地道なカイゼンはできても急速な進化が難しい面があります。また、現場で使う/使わないの違いで知識に偏りが発生するので、既に存在する効率的な近道に気付かず、けもの道的な解決策を延々と受け継いできた、という場合も存在します。
余談ですが、外部との交流を絶った現場には、正しいノウハウが育たず都市伝説が跳梁跋扈する傾向があるようです…「性能を上げる為に、SQL文は全部大文字にしろ」とか…実際測ったことあるんですかと。

さて、このように現場では不足しがちな体型だった知識をベンダーが提供しているのが有償の講習になる訳ですが、この提供スタイルが、今大きく変わりつつあります。
現在の講習では、受講者は演習環境を配置した教室に来てもらい、そこでトレーナーがface to faceで講義や演習を提供する形式になっています。しかしこのスタイルでは受講者が長期間講習に拘束され、開発や運用に支障をきたす場合が多くなってきました。それだけ一線の技術者は忙しくなってきている様です。
この状況に対応するために、オンラインでの教育サービスが各社で始まっており、これを専業にするビジネスも、アメリカを起点として盛り上がりを見せているようです。参考
トレーナーとしても、既に実施できる講習を延々と繰り返し実施するのは、トレーナー自身の成長という点から見るとできれば避けたい事で、オンライン教材として提供できれば、「自分でできることは自分でやらない」が実現でき大変都合が良いのですが、中には自分の仕事が奪われると戦々恐々な方も居るようです。そういう人はたいてい新しい講習の提供にチャレンジする意欲のない人なので、コンテンツの拡充と共に滅びれば良いと思っています。

話を元に戻しまして、オンライン教材が従来型の講習にとって変わるかというと、まだ不足している点を感じます。

  • リアルタイムな質問対応
  • 受講者のモチベーション管理

特に、受講者のモチベーション管理に関しては、こちらの過去記事「[FT]オンライン大学は米国の教育危機を救えない :日本経済新聞」に挙げられているように、先に取り組んでいるアメリカで踊り場を迎えているようです。こちらの記事で書かれた「馬を水辺に引いていくことはできても、水を飲ませることはできない。」をいかに解決するかは、今後のオンライン教育サービスの重要課題だと思っています。

追記:日本では、ソシャゲのノウハウを応用する形での発展が始まっているようです。Edtech「学習アプリ」プレイヤーたちのポジショニングとマネタイズ
これも独自の進化だなぁと興味深いです。 

 

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